ゲーテは?
流行作家だった彼の母、アンナ・ショウペンハウエルのサロンで彼とめぐりあったゲーテは、彼の科学論文『視覚と色彩について』の草稿を、ライン旅行に持ち歩き、《?》長く手許に置いていました。いわゆる『色彩論』は、ニュートンの光学に完全に破れ去り、科学的にはほとんど価値のないものとなりながら、その見事な思索の足跡と、主観、つまり目の側から見た光の理論は、今なお広い分野に大きな可能性を持つものとして、しばしば専門家の間で論議されています。
ゲーテは送られてきた彼の主著、『意志と表象としての世界』を、非常な熱心さで、一気に読み終えたと言います。
「19世紀を善導した男」と呼ばれたゲーテは、自分の息子ほどの青年を指して、「彼は我々すべての頭の上を越えて、もっと先へ行くものだよ。」と絶賛しました。そしてまさにそれ故に、今なおゲーテの評価通り、「卓抜した才能を持つが、不当に無名な哲学者。」なのでしょう。