47 沢水困
困窮。何を言っても信じてもらえない。口、囲いの中に生えた木。伸びようがない。
四難卦の一つだが、易経はこれを吉とする。一切をふさがれた時に、どれだけ人生を楽しめるか? それは自分の内面性と親しむための貴重な時期であると。どんな人間にも、必ずこういう時期はあります。
困窮の時期にこそ、自分の内側の充実と欠落が、具体的に見えてきます。良い時も悪い時もあっという間に過ぎ去り、人生、すぐに終わってしまいます。急いで人間に成らねば、ちゃんと死ねません。これが一番深刻で、笑えない事ではないでしょうか?
「 雨の日に家の中で、あなたは何が出来ますか? 雨の日に身を宿す家を、あなたは持っていますか? なければただの、馬鹿ですよ。」
「 晴れていなければ、あなたは何もやる気が起こらないのですか? からっぽの、証拠ですね。」
と。易経はシビアです。
しかし人間、ある程度の幸福感や目的がなければ、やる気も何も起こらないというのが本当です。例えば運動でも、体調の悪い時に無理をすると、長い間、回復できない傷を負います。調子の悪い時にやる気が起こらないのは、これを感知する能力だと思います。
けれども、逆境にびくともせず、物事を成し遂げて行く人たちには、脱帽ですね。誰でもある程度これが出来なければ、生きて行けません。そう成るための、練習の時期です。
( 四難卦をご参照ください。)
ひとつ座るも ままならぬ
目も耳も みなふさがれて
長い困苦に 投げ入らる
思うままに成らない。ちょっと座る事も出来ない。原典では三年間。
下位のあなたが、三爻( 上司 )と組んで正しい二爻( すぐ上の直の上司 )を攻めると、凶禍にあう。すでにその中にある時は、誠実に謝ること。
饗応と 高い地位とを 両手にし
困るくらいの 慶びが来る
自ら行く時は凶。高位からのお迎えがある。
前に崖 後ろにいばら 家は空
身(三)の置き所なく
深く困しむ
「 家がから 」 とは、女房に逃げられたという事。重要な補佐や慰安の喪失。
苦しさのあまり悪に走ると、傷害を受ける。
各分野の破綻を想定し、あらかじめ万全の注意を怠らぬ事。
このような時には、冷静さだけは絶対に失わぬ事。
困しめる 下を救うに
邪魔あるが
ようやく遅れて ついに手を取る
「 邪魔 」 とは、原典では『 金車 』つまり黒塗りのベンツが道をふさいでいる。これは怖い。
五体は満身
創痍(まんしんそうい)せど
笑みて誉( ほま )れに 困しめり
人みな感じ発揚し
まつりの華は ここにあり
体中、傷だらけ。非難され、フクロ叩きにあう。しかしそれに耐え、返って称賛を受ける。
易にしばしば登場する『 まつり 』人心を一点に集め、爆発させ、次のサイクルに軌道を乗せる事ではないでしょうか?
つる草に
からめとられる 困しみに
むつかしきを捨て 善に帰れよ
原典では今まで自分がバカにして頭を踏んでいた本来の王。これに従えと。
自分がイジメ倒して来たものからの反撃のニュアンスがある。もうその分野は捨てる。
しかし一番むつしいのは、そんな事をした自分の傲慢さかも知れません。これの報復( 報い、結果 )は、手ごわいぞ。