失せ物占
易には 『 失(う)せ物占 』 というのがあります。なくしたものが見つかるか、どこにあるかを占うのです。
ところが私は占いで、失せ物を当てた事がありませんでした。
それどころか、物をなくした時に 「 占ってみよう 」 と思いつきさえせず、ずいぶん後になって 「 あの時、占っていたら良かったのに。 」 と思う事もしばしばでした。
失せ物自体、言わば 『 意識の裏側 』 の事で、物をなくすには、それなりの心理的な必然性があるからでしょう。それを忘れたい。放棄したい。また反対に、 「 これがなくなったら、どうしよう。 」 と言う不安の現実化があるのかも知れません。
ネット上の失せ物占としては、名人、マリアさんがこのページで紹介しておられます。
素人には、易に習熟した人が神に見える例でもありますが、ナルホド、ちゃんと勉強の仕方があり、一歩々々進んで行けるのですね。
ぜひご覧いただきたいと思いますが、上記の例も、下の私の例も、失せ物占となると、 『 卦形が大きなウエイトを占める 』 ように成る傾向があります。これは、相当本気に成らないと、当てに行けないからではないか? 失せ物占自体が、そうとう難度の高いものなのかも知れません。
「 今度なくし物をしたら、絶対に占ってやろう。 」
と待ち構えていると、このたびめでたく、なくし物をいたしましたっ! それはヘッドセット。あの、車の運転中などに耳に引っ掛けて携帯で電話が出来るやつですね。
ところが、 「 占ってみよう 」 とは思いつかない。さんざん捜したあげく、あきらめて新しいのを買い、
「もっといいのが半値で売ってるように成った。これでこそ家電だね。 」
と喜んでいたら、これが音楽は聞けるが電話は出来ないっ。あきらめて終了すると、便利機能で突然携帯のサンプル音楽が流れ始め、人の神経を逆なでするのです。なにぶん古い携帯で、スマホ時代のヘッドセットでは互換性に漏れがあるのでしょう。仕方なくネットで今までの製品を検索すると、製品自体が古く品薄。安いのは 「 販売終了 」 。最安値が6,800円だとおっ! 最新のが2つくらい買えるじゃないかっ。マグロの刺身半額200円が、34冊も買えるじゃないかっ! ものすごい喪失感だ!
もう一度、徹底的に探し、ない。……… 仕方ない。お金落としたと思って、買うか? ……… と途方に暮れ、その時はじめて、
「 そうだ、占ってみよう! 」
と思いついたのです。(泣) さて、得卦は、山地剥から山雷頤。
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山地剥 ==> 山雷頤
山地剥、不気味な卦です。しかし之卦の一番下から陽が萌え出て、山雷頤。
「 これは、見つかるかも知れん。 」
駄目だろうと思っていた所、意外な得卦です。
ヘッドセットは 「 なくしたらいかん 」 と思って、ウエストポーチの内側の、更にチャックの中に入れていたのですが、山地剥は底が抜けている。六爻が失せ物とすると、ストーンと底なしに落ちた? カバンに入れようとして、落としたな? すると車の中と言う事になる。もう一度車を捜すか? いや、車は座席の下にまで頭を突っ込んで、徹底的に捜した。もう捜す所がない。
いやいや、答えは之卦だ。山雷頤。籠 ( かご ) か箱のような形。その中にあると卦は言っている。何だろう? ……… 山地剥から山雷頤は、下卦は地雷復で、しかも上は閉じたまま。しばらーく考えた後、ついに、
『 カバン、ポーチがあやしい。 』
ストーンと落として剥、なくなったが、底に引っかかっている。加えて箱のような形。これは車内かも知れないが、車にないとしたらそんな形のものは袋、つまりカバンしかない。目的物は初爻。カバンの下部だ。ぜんぶ見たのだが ………
ウエストポーチを膝の上に置き、何度開いたか知れないチャックを開く。中の物は全部出して調べた。ない事は判っている。
しかしウエストポーチの前部には、よく携帯や煙草を入れるためのポケットのような物がついているでしょう。この片側に、さらに装飾のような横線があり、それはマジックテープで止められている袋なのです。
滅多に使わないので、見逃していました。上から触ると、何かある! 開いてみると、
『 あったァ 』
感激です。思わず叫んでしまいました。
そう言えば頤は 「 おとがい 」 アゴを表す。口の中。アゴも顔の一番下で、顔から突き出したいる。
「 このカバンのアゴと言うと、いつも携帯を入れている、この出っ張りだったのか? 」 それはちょっと、こじつけか。
しかしよく考えてみると、こんな所に入れていたら普通ほとんど瞬時に見つけられる筈です。
この占断自体、昨夜立卦して解らず、一晩寝て起きて考えたもので、ずいぶん時間がかかっています。
やはり相当意識に結滞があったのでしょう。
おそらくヘッドセットつけて、養老院や病院、役所や職場と連絡しながら走り回るのに疲れた。そして最後にヘッドセットを使ったのが、離婚さわぎによる兄Aの引越し騒動の時でした。引越しが終わって一段落して困憊し、カバンのチャックを開けるのも厭い、指でマジックテープを開きヘッドセットを突っ込んだのでしょう。そしてもうそこを開けたくなかった。その後も使えないものを選んで買っている。
しかしそれが意識の努力によって見つかったのは、これらが放棄してしまえる問題ではない。疲れは癒えた。また意欲的に対応してやるぞと言う姿勢を取り戻したのかも知れません。
先ほどヘッドセットのフル充電を完了しました。
もう一例、大事な書類をなくしてしまった例をご紹介します。
ないと聞いた時には、冷や汗が出ました。捜したのですが、書類なんか、あるはずの場所しか捜す事は出来ず、
「 もしや、まさか、昨日の朝、シュレッターにかけた、あの中に入っていたのか?」
と思い当たりました。
さらに冷や汗。こんな時、あわてて占ってはいけない。しばらく間をおいて、落ち着いてから占ってみました。得卦は、
水火既済 → 天地否
之卦の天地否は、八方ふさがり。本には、 「 小さなものなら時を経ると出て来る。 」 とあります。何故なら 「 今は塞(ふさ)がっているから 」 でしょう。しかし大きなものは、大成卦のストレートな意味、 『 ダメです。 』 と判断すべきでしょう。重要な書類を 「 小さなもの 」 と言うのは、少々強引かなという気がしますね。
それよりも、本卦の水火既済 ……… この形は、シュレッターに掛けられた書類の姿に似ていないでしょうか ………
「 焼却炉で燃やしたとすれば、燃やしたのは俺だよな ……… 」
そうして、裁断されたもののうち、
陽は煙として上に登り、形なきものの象意、乾天となり、
陰は灰となって、形ある坤土に還っていった ……… 私は呟きました。
「 裁断された時点で既( すで )に済み、終わっているのだが、終わった後までを見せてくれるとは ……… 」
見事な占断で、ございました ……… ( 泣 )
書類は作り直しましたが、あれから二週間 ……… 書類はまだ出て来ておりません ………
PS.それから二年、書類はまだ出て来ておりません ……… ( もう出て来んでもヨロシイ! )