参考にした本
まず『易 入門』 黄 小娥 著
これは古典的名著で、64の大成卦を見事に紹介した本。
『易』を広く一般に、占いとして紹介したのは、この本が戦後初ではないかと思います。占例も、
「力道山はこれからは事業家としても活躍するでしょう。」とか、
「金田選手は大投手に成長してゆくに違いありません。」とか、鳩山内閣がどうこう、池田隼人の所得倍増計画は時節に合わなく成った………などなど、ここまで古ければ、かえって新鮮ですね。
この本で易にめぐり合った人は、多いでしょう。私もその一人です。
04'05/06現在、再販がかかっております! 『黄 小娥』で、すぐ検索できます。サンマーク出版です。
やっぱり、根強い人気があるんだと、嬉しく思います。
私の持っている本は相当古く、(昭和37年版。初版は36年。)校正もあまりされていないはずですが、表現が、まったく古くなっていないのです! 黄 小娥先生の文章は、こちらがどこへどれだけ跳ぼうが、ぜんぶ両手のひらに包み込まれるようで、実にいい気分です。「もう、この表現以外はないな。」と思う事もしばしばです。
機会があれば一度、手にとって見てください。あれほど解りやすい易の本は、まずないでしょう。
この再販でちょっと、『易ブーム』が起こるかも知れませんね。
次に『実占・易経』 立野 清隆 著(五月書房)
この本はたたき上げの実占家が書いた……… と思っていたら、それだけではありませんでした。立野先生は、慶應義塾大学の教授です! これは今日はじめて知りました。
ネットで検索すると、西洋哲学全般に、多くの著作をなしておられます。
古代・中世・ルネサンス期、プラトンからフッサールにまで、その著作は及んでおります。
「専門分野ではないのか。」とおっしゃるかも知れませんが、これを読んで「頭のいい人が、趣味で片手間に書いた。」と感じた人は、おそらく一人もいないでしょう。
私も今、少し読み返しましたが、
「やはりこの人は、実占家だ。易を使う人だ。」
と、改めて思いました。
易を占いのテキストとして、我々が自分の色々な疑問を問いかける時、
「出た卦を具体的にどう解釈したら良いか?」
と言うのに、一番頭を悩まします。この問題に対して、この本は絶大な威力を発揮します。
また、いちいちの具体的な占断は、見事に易経の理論に裏打ちされており、それは学びが深まるほどに、より納得のゆくもので、実践と易の哲理を往復した著者の思索の足跡を、我々がなぞれるように書かれています。
具体性に対しては、この本に並ぶ本はあるかも知れませんが、越える本はちょっと、将来もないでしょう。これ以上の具体性を持たせたら、単に煩瑣なだけで、かえって判断が難しく成ってしまうからです。
基礎から高度な事まで詳しく教えてくれ、申し分ありません。変爻によって変わる八卦の解釈など、他にはない非常に実践的な事にも言及してくれています。
また、64卦すべて、病占についても言及しておられるのは、ありがたい事です。
絶版………と思っていたら、ネットで検索すると売ってました! <復刊>とありますから、同じ出版社でしょう。やはり、たくさんの人から求められているのですね。
『易』本田
05-06-09現在、朝日選書から再販がかかっております! 文庫版ではなく、単行本で一冊仕立てのようです。レビューを見ましたが、やはり全員、五つ星ですね。出来れば六つ、つけたい所です。
これは、こと易経の内容に関しては、完璧な本ではないでしょうか?
まず原文とその書き下し。漢字の意味の解説、たん伝、象伝、必要に応じて序卦伝などの紹介と解説。今までの主要な研究の紹介。これらを平易な現代文で解りやすく解説し、それらを総合した、ご自身の解説。
完璧の上に、プラスアルファがあります。
また付録には、お約束の、繋辞伝・説卦伝・序卦伝・雑卦伝。
著者 本田済先生は、東大の先生と思っていましたが、確認のために検索すると、ちょっと見つかりませんでした。確か、そうでした。
監修は、「この人の名前だけでも売れる。」と言う、吉川幸次郎。贅沢な一冊ですね。(二冊ですか。)
絶版です! と言おうとして、今ネットで検索すると、案外売っているものですね。ただし、出版社は違います。文庫版ではないようです。
しかし、『文庫版の中国古典選』と言う性質から、再版のかかる可能性は高いと思います。このシリーズは全38巻あり、このシリーズの他の作品にも、多くのファンがおられると思います。
で、今ネットで知ったのですが、著者の本田済先生は易経だけでなく、中国の古典全般に対し、膨大な翻訳を行っておられます。
(04年1月21日の産経新聞 産経抄が、『漢文学の権威的な存在』として、本田先生の墨子の訳を引用していました。大学者だったようです。 失礼しました!)
これは、非常な強みですね。最初の古典、易経が後世に与えた影響をフィードバックして、その目で原典を見れる訳ですから、展開の方向も解釈の精度も、いやがうえにも増すと言うものです。
この本がなければ、このHPは質的に、まったく違ったものに成っていた事でしょう。感謝です。
これは『火沢けい』の六爻を作った時に思ったのですが、
「考えたら、この問題を文学で解けるのか? いったいこの人は ………?」と、底知れぬ畏ろしさを感じました。
言わば私は「算数の問題を国語で解かれた」ような奇跡を目の当たりにして、「そも、易経の作者は、神か人か?」と言う感慨に打たれました。ユングの「自己実現・個性化の過程」のあらましを、数行でやってしまっています。これは、問題以外の一切を気にする必要のない、古代の作家だけに許された表現。
そのテーマに関して、これからの展開をすべて内包しながら、原点から軸足を離さぬ表現です。
この本は、易経の原作者の薫風を、しばしば感じさせてくれます。
もっとも私には、それはすれ違った後、暫らくしてからでないと気が付かないものでした。けど、あなたにはどうか、最初からそのつもりで読んで頂きたいと思います。
私は易経を、暗号のように読んでいた。説いた人の姿を、想定していなかった。
しかし易経も、他の古典同様、人が我々に対して、書いてくれたものには違いなかったのです。それが本当の価値であったかと、ようやく気付かされた次第です。
本田先生は、我々と易経の著者を直接結んでくれる、シャーマンのような方と思います。
最後に、『 易学大講座 』 加藤大岳 著
これは 「 昭和の易聖 」 と呼ばれる加藤大岳師が、易全般に対して一通りを解説した講義の、「 講義録 」 です。私は何か、その場にいるような雰囲気にさせてくれる 「 講義録 」 というものが大好きなのですが、これは全八巻からなる大部の著。易に携わる者にはバイブルのように思っておられる方も多くおられます。
内容は基礎の丁寧な解説から、64卦、384爻すべての解説。講義録ですから、その中にしばしば雑談のように重要な知識が混ぜ込まれます。そして方術としての易。綜卦、錯卦、易位などの基本、本編で少し紹介した向待法や、消長法、生卦法などなど。
実は私、この本はこのHPの参考にはしていないのです。
というのも、持っていなかったから。もし参考にしていたら、このHPは一生出来なかったと思います。( 笑 )
高名なこの本を欲しくて、探したけれども、ない。しばしば検索していると、ある日、Googleで100位内外の所に発見! 全八巻、5,000円也でゲット!あなたも月一回くらい、諦めずに探したら、見つかるかも知れませんよ。
一巻の序言の後に 「 昭和戊寅仲秋 」 とありますので、昭和13年、西暦1938年に刊行され始め、私の持っている本は昭和39年 第19版です。
書き込みだらけで、読んでいるうちに本が解体を始めるというツワモノですが、売った方も買った方も、「 しめしめ 」 でしたね。
この本を読んでいたら、私は易者に成っていたかも知れません。食っていけるかどうかなど問題ではなく、もうガマン出来ずに飛び出して行ったかも知れません。( 笑 )
残念なのは、入手の困難と、旧漢字が使われている事。旧漢字はしかし、目が慣れたら普通の現代文と同様に読めます。我々あんがい普通の文章でも、読みや意味が分からなくても、すっ飛ばして読んでいて、結構それに気付いていない事が多いんです。それと同じように読めるようになります。
またこのHPも、この本の内容を加味して、全編書き直しをするつもりでおりますので、乞うご期待!
私もそれほど多くの易の本を知っている訳ではありませんので、この他にも良い本がたくさんあるに違いありません。そんな本にめぐり合うまで、どうかタダで見れるこのHPで、ガマンしてください。(笑)