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漸(すす)む。少しずつ、とどまり従いながら進む。
女とつぐの卦。いちいち手順を踏み、婚姻へと進む。これは次の『帰妹』と対応しています。
『漸』は飛び立って、嫁ぎゆく。それが一人の男へか、崇高な理念へかは知りません。
それはまるで、水鳥が泥沼から、天高く飛翔するようです。原典ではこの様子が美しく表現されています。
水鳥の 陸に上がるに 逡巡し
お叱(しか)り受くは
危うきがため
水鳥は 岩に上がりて 楽におる
両の翼は 次に飛ぶため
丘陵に 参じ水鳥 われ忘する
夫は妻を 妻はわが子を
こんな事は、現代が初めてだと思っていましたが、古代からあった人間のサガ。しばらくそれを忘れるほど、良い教育を受けていただけの事だったんですね………
水かきで 木に登るのも 水鳥が
風に乗るため 良き風を得る
(吉)
水鳥は 王の玉座へ 進み行き
不妊の末に ついに産み出す
(吉)
邪魔があるそうです。実際の出産だけでなく、産み出す事すべてを意味します。
産みの苦しみです。
みなとりの どこまでも高く
無碍( むげ )に去る
凡俗その羽 たてまつるのみ
ショーペンハウアーいわく「 学者先生たちは、天才をまるで野ウサギのように見ている。だから、生きている間には矢を射るだけで、死んで初めて調理され、味わう事が出来る。」
多くは自分と同時代、そばにいるというだけで、自分以下と思っている。
しかしこの爻は、別に死なんでもヨイです。高く翔け行くあなたの、思い出話が彼らの自慢です。吉。